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tokyo

深川のギャラリー

2019.7-12

クライアントはこの築45年の賃貸マンションのオーナーであり、油絵を描くアーティストでもある。自身は建物の最上階に住み、1階の一部屋をアトリエ兼倉庫としていた。近くには清澄庭園があり、そこで毎朝絵を描くのが日課だそうだ。要望は1階の一部屋を二つに区切り、一つは作品を展示したり近所の人と語らうことができるギャラリーとし、もう一部屋はギャラリーのバックスペース兼ゲストの休憩スペースを設けたいという事であった。ギャラリーの間仕切り壁は、展示するための釘が効くように12mmのコンパネの塗装とし、反対のバックスペース側はそのままの現しとして、場の雰囲気の変化を付けている。また、元々の内装の歪みと緩衝を防ぐため納まりは全て目透かしにし、さらに木下地の木地もそのままにし、このマンションに入居するイラストレーターがDIYで設えた棚やテーブル、ベンチなどの木地との調和を図った。本来であれば、こういった内装の歪みや元々設えてある家具什器などは、ノイズとして巾木や見切りで覆い隠されたり、除去されてしてしまうのが普通である。しかし、そのノイズをこのプロジェクトのコンテクストであると前向きに捉え、その調和点を丁寧に探ることで、結果的にこの空間に深みを与えながら無駄なコストを省く事を可能にした。

内部を極力ローコストに抑えるとともに、外部のエントランスファサードについての提案も行った。初めて訪れた時、鮮明な青い庇と、活き活きとした鉢植えの植物が印象的であったが、どうも腑に落ちなかった。せっかく良く手入れされた鉢植えの植物の繊細な色彩が、強い青によって掻き消されてしまっている。そこで、オーナーが好きな色が青であるという事は重々承知の上、植物の色彩が引き立つよう庇の色を白く(限りなくグレーに近い白で)塗ることを提案し、快く承諾して頂いた。
この建物がある地域はかつては職人が多く、今は高齢になってしまったが、そういった人たちが集い、若い人たちにこの地域の歴史や技術を伝える場にしたい、そんな75歳になるオーナーの想いに突き動かされた。

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