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tokyo

​ROJIBI(千住旭町路地裏美術館)

2019.3-6

築90年の木造2軒長屋の改修である。クライアントは北千住で空家再生を行うNPO法人であり、所有者の事情により1年間限定で借り受け、若手芸術家を招聘し地域に開かれる美術館にしたいとの希望があった。当初、NPO代表と女性スタッフ2名でDIY作業を行なっていたが、作業効率と全体プランニングのコーディネートが必要と感じられ、作業へ参加した。限られた人員と予算の中、下町の路地と美術館の振る舞いを成立させるため、建築的操作は3つに絞った。1つ目は、路地に開かれた奥行きのある半屋外空間の縁側である。作品を展示すれば路地に訪れる人々への第一印象を担い、子供向けのワークショップを行えば路地へ賑やかさが溢れる。2つ目は、美術館のレセプションとスタッフの居場所となるカウンターである。このカウンターの仕上げはこの建物から取れた黒味を帯びる古材を再利用した。3つ目は、作品を展示するための背景となる漆喰を仕上げとした展示壁である。この壁の入隅は建物入り口からのアイストップになることからR壁とし、デッドスペースになりがちな入隅部分も作品が展示可能なように配慮した。

このNPO法人が活動を始めてから10年間で7件目の空き家再生であり、区内においての空き家再生の実績はトップクラスである。しかし、足立区内では約2000件の空き家があると言われており、年間10件の再生を行なったとしても200年はかかることになる。空き家を問題視するのであれば10年以内に解決をすべくスキームを構築しなければならない。その間使われない空き家は周辺環境に不快で不安な思いを掻き立て続けているのである。解体処分も一つの解決方法ではあるが、処分方法や場所といった環境への問題と、古いものを大切にしたいという感情的な問題にも傾注するべきである。
建物には必ず所有者がいる。空き家の所有者の多くは「止むを得ない事情」を抱えているという。「止むを得ない事情」とは大概、体力的な問題、精神的な問題、年齢的な問題、金銭的な問題、相続的な問題なのであろうが、空き家とはそのような諸問題が解決されるまで放置された空白の時間なのである。その間何もせずにただ待っている間、建物は朽ちていき、益々手をつけられなくなっていく。しかし、我々は「止むを得ない事情」は誰にでも必ず起こるということがわかった今、それを防ぐことも可能である。建物の所有者には将来の先見力、決断を行う判断力、実行する資金力の3つが必要と考える。この何れかが欠ける場合、建物を所有することは困難になるであろう。今の時代、住宅ローンのような資金力の審査はあるが、町や都市といった建物の所属環境を維持向上するような先見力や判断力がどの程度あるのか計る術はない。建物を所有するには社会的な責任を負うということを我々は常に意識しなければならない。